中国経済発展の大きなエンジンを回す小さな企業

2024年4月1日

 ナイトタイムエコノミーの市場規模が前年同期比で16.7%以上増加し、飲食や観光、ショッピングなどの業態が各地で成長を見せている。県域の農村ではライブコマースを手がける業者が同150%増加し、オンライン「原産地」経済が台頭。また、近場で低予算の気軽な旅行が増えたことで、新たな旅行目的地と新興業態の人気が高まっている。中国のマーケットエンティティの90%を占める小規模・零細企業は、経済回復の温度計とバロメーターであり、雇用を支え、経済の活力を創出する新勢力でもある。小規模・零細企業はその独特の創造力と柔軟性によって、急速に発展する新興市場の中で力強く成長し、中国経済に彩りを添えている。

小規模・零細経済の新たな注目点は何か?

 (1)「都市のナイトタイムエコノミー」。2022年に、中国のナイトタイムエコノミーの市場規模は同16.7%以上増加した。湖南省長沙市のような都市では、夜間の消費が1日の消費全体の6割以上を占める。最新の調査によれば、外食産業の小規模業者の半分以上が営業時間を夜9時以降まで延長して、ナイトタイムエコノミーに参入したという。

 (2)「県域のライブコマース」。原産地であるという強みを活かし、県域でのライブコマースを多くの小規模・零細企業が選択するようになった。22年、主流ライブコマースECプラットフォームに出店する県域業者は同150%以上増加し、成長率はライブコマース全体の3倍になった。

 (3)零細企業の海外進出。越境ECは5年で倍増し、小規模・零細企業が7割以上を占めた。

 (4)「専精特新(専門化・精密化・特徴化・新規性)」企業。小規模・零細企業も高い技術力を持っている。工業・情報化部(省)が認めた「専精特新」企業のうち、56%が中小零細企業だった。

 (5)「気軽な旅行」経済。最新の調査研究によれば、旅行関連の小規模零細企業が受け入れた観光客のうち、自身の居住する省を旅行した人が80%を占め、近距離、低予算の気軽な旅行が人気のある選択肢になったことがわかる。

 (6)ペット経済。「家族の一員」になったペットは今、より多くの新たな需要を生み出している。「ペット経済」の複合年間成長率は18%を超えている。ペットフードだけでなく、美容医療サービスも台頭して、市場シェアの4割近くを占め、オフライン小規模・零細店舗での消費額の伸びが60%を超えた。

 (7)新シルバー経済。高齢化により、シルバー経済が高度化している。データでは、高齢者の消費能力が猛烈な勢いで伸び、過去3年間近くの複合成長率は20.9%に達し、80後(1980年代生まれ)と90後(1990年代生まれ)を上回った。

 (8)男性の顔面偏差値経済。成長率は200%を超え、美容医療における消費の平均客単価は男性が女性を上回った。

減税・費用削減政策で小規模・零細企業を重点支援

 小規模・零細企業は雇用を拡大する主要なルートと技術イノベーションの重要な源泉であり、経済・社会の発展を推進する上で欠かせない重要な力でもある。こうした企業にとってみれば、上述した注目点の1つ1つにビジネスチャンスや経営上のチャンスが隠されている。「中国小規模・零細経営者調査」によると、税徴収や金融の面での小規模・零細企業向けの支援政策のカバー率が上昇を続け、貸出金利は5四半期連続で低下した。小規模・零細企業は積極的に求人し、在庫を増やし、オンラインルートを開拓した。

 ここ数年、中国は小規模・零細企業を税・費用徴収面で支援する一連の優遇政策を打ち出し、企業の経営コストを引き下げ、企業の資金調達を支援し、雇用の受け入れを奨励した。中国は今年、これまでに打ち出した政策を着実な実施したうえで、税・費用徴収優遇政策をさらに充実させ、小規模・零細企業、自営業者への支援を際立たせ、所得税や付加価値税など税徴収面の優遇政策の正確性と有効性を高めた。

 国家税務総局が発表したデータでは、今年1-4月に全国で新たに発生した減税・費用削減と税還付・費用納付延長の金額は4689億元(1元は約20.0円)に達した。そのうち民間企業と自営業者を含む民間経済は、納税者・費用納付者の減税・費用削減と税還付・費用納付延長の金額が全体の7割以上を占める3393億元を超え、最大の受益者になった。

金融が小規模・零細企業を後押し

 金融は実体経済にとって血液のようなもので、企業の発展プロセスで欠かせない重要な役割を発揮する。小規模・零細企業が新型コロナウイルス感染症という特殊で困難な時期を乗り越えるよう支援するため、過去3年近くにわたり、金融システムは大きな支援措置を取った。新型コロナ対策措置が最適化されてからは、小規模・零細企業の生産経営状態は徐々に回復し、金融機関もこれにともなって各商品とサービスを最適化し、優れた成果を上げた。

 中国銀行業協会がまとめた最新のデータでは、2023年第1四半期(1-3月)末現在、銀行業を営む金融機関の小規模・零細企業に対する貸出残高は64兆5000億元で、10年前の5倍以上になった。そのうち金融包摂分野での貸出残高が35兆1900億元、小規模・零細企業への金融包摂分野での貸出残高が26兆1600億元で、18年の初回統計以降でどちらも3倍以上になった。小規模・零細企業に対して新たに貸し出された金融包摂型貸出の平均金利は4.42%で、17年末比で3ポイント近く低下した。

 このほか、工業・情報化部(省)などの当局は金融機関が中小零細企業の支援に力を入れるよう誘導し、信用貸し、住宅初回購入時の初めてのローン、中長期貸出の比率を持続的に高めるよう推進した。「1チェーン・1政策・1認可」による中小零細企業への融資促進行動を展開し、融資・担保・費用削減・奨励補助金政策を整備し、中小企業の資金調達を促進した。

将来は「専精新」の発展に注力

 政府は困難を解決し、雇用を受け入れると同時に、条件を満たした中小企業が「専精特新」の道を歩むことを望んでいる。工業・情報化部中小企業局の梁志峰局長は、「これまでに工業・情報化部は『専精特新』の中小企業を累計8万社あまり育成し、そのうち『専精特新』の小巨人企業(高い成長性または大きい発展のポテンシャルを持つテクノロジーイノベーション中小企業)は8997社だった。2023年5月末現在、『専精特新』の中小企業累計1420社以上がA株で上場し、A株上場企業全体の27%を占めた。23年1-5月に新たに上場した企業のうち、『専精特新』の中小企業が56%を占めて、上場企業の中心的存在になった」と説明した。

 今後、中国は「専精特新」の小巨人企業の発展の支援に力を入れ、引き続き中小企業デジタルトランスフォーメーションのテスト事業を推進する。25年をめどに、イノベーション型中小企業100万社、「専精特新」の中小企業10万社、「専精特新」の小巨人企業1万社を育成することを目指す。同時に全国で一連の中小企業の特色ある産業クラスターを育成し、中小企業のコアコンピタンスをさらに増強するとしている。