目下、デジタル貿易がデジタル技術とデジタルサービスを通じて各分野に破壊的イノベーションをもたらしており、デジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させ、デジタル貿易を力強く発展させることが、世界各国がデジタル時代におけるチャンスを獲得し、経済情勢の不確実性に対応するための「金の鍵」になっている。
デジタル貿易がグローバル経済成長の「金の鍵」に
データを見ると、過去3年間に、グローバル越境データ流通量の規模は120.6%成長、デジタルサービス貿易の規模は36.9%成長となり、いずれも同期のグローバルサービス貿易規模と物品貿易規模の成長率を上回った。米コンサルティング大手のマッキンゼー・アンド・カンパニーの予測では、2025年までに、世界のデータ流通の経済成長に対する寄与は11兆ドル(1ドルは約148.4円)に達するという。
独コンサルティング大手のローランド・ベルガーのグローバルパートナー兼中華圏副総裁である江浩氏はこのほど、「次の3つの面がデジタル貿易の飛躍的な発展の実現を推進するだろう。まず、デジタル技術は世界のサプライヤーがハードルなしで参入できるようサポートし、絶えず整備されるデジタルインフラは、物流や決済などの面でデジタル貿易が受ける制約をより一層解消することになる。次に、新型コロナウイルス感染症が消費と業者のデジタル化プロセスを加速させている。デジタル化した消費が習慣化すれば、後戻りは難しくなる。さらに、地域を跨いだ協力が深化している。たとえば地域的な包括的経済連携(RCEP)も、関税障壁の撤廃、貿易円滑化レベルの向上、デジタル協力技術の重視などの面から見て、デジタル貿易の発展にとって好材料となっている」と述べた。
江氏は将来の展望について、「デジタル貿易がグローバル市場に深く浸透するにつれ、データ流通規模は飛躍的に拡大する。また、世界のグリーン・低炭素発展の要求に基づいて、デジタル貿易は世界の二酸化炭素(CO2)の大幅な削減の推進における重要な足がかりにもなるだろう」との見方を示した。
中国のデジタル貿易が勢いよく発展
中国のデジタル貿易の発展状況はここ数年、成長傾向を維持し、対外貿易の質の高い発展を促進する重要な力となりつつある。
データによれば、2019年から2022年の間、中国の総合デジタル貿易総額(越境EC貿易額とデジタルサービス貿易額の合計)は3兆1700億元(1元は約20.3円)から4兆6800億元に増加し、年平均成長率は13.9%だった。23年上半期(1-6月)、デジタル化決済が行われた中国のサービス貿易額は、前年同期比12.3%増の1兆3600億元に達した。
山東産業技術研究院デジタル経済研究所の許余潔チーフエコノミストは、「中国のデジタル貿易はすさまじい勢いで発展している。これは中国のデジタル貿易分野における一連の優位性によるものだ。世界2位のデジタルエコノミーである中国は、22年にデジタル経済規模が50兆元を突破し、国内総生産(GDP)に占める割合が41.5%に達した。また中国はここ数年、5G、データセンター、クラウドコンピューティングなどデジタルインフラ建設で大きな進展を遂げ、ビッグデータ分析、モバイル決済システム、物流などの分野でも世界のトップクラスに入っている。これらすべてがデジタル貿易発展の着実な基礎を固めた」と述べた。
海外進出の規模が絶えず拡大
デジタル化の波が押し寄せる中、5G、クラウドコンピューティング、人工知能(AI)をはじめとする新技術が、貿易のDXを推進する重要な動力源になった。とりわけデジタルサービス貿易の分野で、デジタル化技術を駆使してこれまでは貿易の対象にならなかった一部のサービスが貿易できるようになり、遠隔医療といったサービス貿易の新モデルや新業態が生まれ、サービス貿易の規模がさらに拡大した。同時に、企業もデジタルプラットフォームをベースに、より多くのサービス貿易のオンライン化を実現し、グローバルサービス貿易をより効率良く便利なものにすることができるようになった。
このほど開催された中国国際サービス貿易交易会(CIFTIS)2023で、阿里巴巴(アリババ)国際ステーションが全方位型AI対外貿易製品を展示した。AIのサポートがあれば、家にいながら世界中に商品を売ることができるようになる。この製品は商品の発表と管理、マーケット分析、顧客対応など複数の機能を備えており、対外貿易業務を展開する上でのあらゆるプロセスをほぼ網羅している。専門的人材が不足する中小企業でも、AIのサポートを受けながら海外の顧客とスムーズに交流し、海外市場のトレンドに合致した商品を発表し、円滑に海外進出できるようになるという。
日増しに良くなる政索環境
業界関係者は、「中国のデジタル貿易がここ数年、急速に発展したのは、主として日増しに良くなる経済貿易分野のデジタル化政策環境と貿易イノベーション発展モデルによるものだ」との見方を示す。
このほど北京市海淀区で行われたデジタル貿易発展フォーラム2023で、提案書「デジタル貿易協力パートナー計画」が発表された。この計画の狙いは、グローバルデジタル貿易企業に対し、ルート開拓、政策コンサルティング、現地でのマッチング、実施への支援といったサービスを提供することにある。デジタルサービス輸出の強化と最適化については、商務部(省)、中央サイバーセキュリティ・情報化委員会弁公室、工業・情報化部(省)が今年4月、「国家デジタルサービス輸出拠点イノベーション実践事例第1弾」を通達し、国家デジタルサービス輸出拠点第1弾の12ヶ所から一部の優れた拠点を選び、その経験ややり方を全国で普及させるとした。
専門家は、「トレンドによる牽引、技術による推進、政策による促進、ルールによる保障などの相乗効果の下、デジタル貿易の発展を駆動する力はこれから絶えず増強されるだろう。国際社会はすでに幅広い共通認識を形成しており、デジタル貿易の発展の見通しには期待が持てる」との見方を示した。